老後の安心を考える制度「家族信託」と「任意後見」の違いとは?(2)


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  • 老後の安心を考える制度「家族信託」と「任意後見」の違いとは?(2) 2019-02-04


     前々回1月21日のコラムで、最新の統計では「日常生活になんらかの制限がある期間が男性で約9年女性ですと12年以上ある」ということを述べましたが、こちらの数字は意思能力だけでなく、身体能力が衰えた場合も含んだ数字です。
    では意思能力が衰えた状態、いわゆる認知症を発症している人はどれくらいいるのでしょうか?

     2012年時点で65歳以上の高齢者のうち認知症を発症している人は推計15%で、約462万人に上ることが厚生労働省研究班の調査で明らかになっています。認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)の高齢者も約400万人いると推計されており、65歳以上の4人に1人が認知症とその“予備軍”となる計算です。 そんな現代にあって、「今は元気でなんでも自分で決められるけど、将来は認知症になってしまうかも?」という誰もが持つ不安を感じている方が、もしもの時に自分の面倒を見てもらいたい人と事前に任意後見契約を結んでおき、認知症になった時に家庭裁判所に申立をして任意後見人に就任をしてもらう制度が「任意後見」です。
    成年後見人制度にて選任されるであろう弁護士、司法書士といった専門職の方々より親族や親しい方に面倒を見てもらいたいという希望が叶えられることがこの制度の最大のメリットでしょう。

     また、成年後見人制度の場合だと基本報酬月2万円、流動資産5千万円超で月5~6万円となるランニングコストの低減もメリットといえます。ただし、任意後見制度にも任意後見監督人報酬という経済的負担が発生しますので、それについての理解と備えは必要です。

     しかしながら、任意とは言え後見制度は、『本人のために財産を維持し、支出は本人のために必要なもののみ』という考え方により運用されます。
    したがって、生前の相続対策、相続税対策をとることは、原則としてできません。なぜなら、相続に関する生前対策は、相続人が節税をするためのもので、本人のためになるものとは言えないからです。
    よく問題になる本人が土地や建物・家屋といった不動産を所有している場合、アパートを建てたりして有効活用をしたりすることはできず、土地を売りたいと思っても、制限があるためすんなりとはいきません。
     

     一方で「家族信託」は、後見のような制限がなく、広範な財産管理を行うことができます。
    後見の場合は、本人の財産を維持するという目的で行われるため、相続のための対策、相続税の節税方法などをとることができませんでしたが、家族信託のメリットは、信託契約で定めるところにより、相続人のための相続対策、財産の有効活用や資産の組み換えなど、柔軟に行うことができることにあります。

     ところが、家族信託にも身上監護の義務がないというデメリットがあります。
    また、家族信託はまだ新しい制度ですので普及が不十分な状態であり、後見手続きほど認知されていない点、制度に詳しい専門家がまだまだ少ない点も課題といえます。

     家族信託と任意後見を併用すること自体のデメリットやリスクは、あまり想定できませんので、元気なうちにこれらの準備をすることは非常に重要です。そして、主要な財産管理は家族信託で担い、信託財産に入れなかった主要でない財産の管理と身上監護権は任意後見で担うというのが、両制度のメリットを活かした利用方法と言えるのではないでしょうか。


    ページ作成日 2019-02-04