税制改正でどうなるタワマン節税 固定資産税の見直しでタワーマンション高層階は増税へ…規制の効果は?


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  • 税制改正でどうなるタワマン節税 固定資産税の見直しでタワーマンション高層階は増税へ…規制の効果は? 2017-04-17

    こんにちは、資産活用サポート担当の渡邉です。 

    政府与党が、「タワーマンション節税」をけん制するために、高層マンションの高層階について固定資産税と相続税を引き上げるといった発表がありました。 

    この改正によりタワマン節税は過去のものとなるのか?所有している節税目的のマンションは早く売り抜けてしまった方がいいのか? 
    本日は、そんなタワマン節税に関する話題を検討していきたいと思います。 



    1、「タワマン節税」とは? 

    相続税の計算において、土地は路線価、建物は固定資産税評価額で評価します。
     
    マンションの固定資産税評価額は、マンション一棟の評価額を床面積で単純に按分して求められます。 
    つまり、50階建てのマンションの最上階も1階も、税務上の価値は一緒という事になります。 

    相続税に関しても同様で、路線価方式にしても倍率方式にしても、上層階と低層階で差は設けられていません。 
    相続税は、基準を「時価」としながらも、実際の計算においては取引価格との大幅な乖離が発生しています。 

    タワーマンションにおける、これら税評価と実取引での価格の乖離を利用した節税方法が、いわゆる「タワマン節税」と呼ばれるものです。 
    タワーマンションを用いた相続税の節税は、効果が大きいものの、採用するためには多額の原資が必要となります。

    政府・与党としてもこのタワマン節税を問題視し、2017年度の要綱へ改正案を盛り込みました。 



    2、改正の内容 

    20階建て以上の新築マンションで、2018年以降に引き渡しが行われる物が改正の対象となります。 
    対象となったマンションは、固定資産税評価額を高層階は高く、低層階は低くします。 
    これにより、実際の取引額と相続税評価額のいきすぎた乖離を緩和する事が狙いです。 

    例えば、50階建てのタワーマンションの場合は、25階を基準階とし、最上階では約10%程固定資産税評価額が上がります。 
    逆に、1階部分では約10%程固定資産税評価額が軽減されます。 


    3、効果はあるのか? 

    一見理にかなっているように見える本改正ですが、効果の程はいかほどか? 
    実は専門家からは、効果を疑問視する意見が相次いでいます。 

    先述の通り、固定資産税の上昇幅は、最上階で約10%程の増加を予定していますが、実際の取引額では相続税評価額の何倍にもなっているケースもざらにあります。 
    はっきり言って、焼け石に水。タワマン節税の利用状況には、ほとんど影響はないと見る意見が主流です。 

    タワマン節税を本当に規制するのであれば、現在の税制度を抜本的に見直す必要があります。 
    そうなれば非常に大掛かりな改正となってしまうため、今回のような、いわば「お茶濁し」的な改正が行われるのだと考えられます。 



    4、いきすぎたタワマン節税には注意 

    今後も効果を発揮すると考えられるタワマン節税ですが、行き過ぎたタワマン節税には注意が必要です。 
    たとえば、こんな失敗例があります。 

    被相続人が2億9,300万円で購入したタワーマンションを、翌月相続人が相続し、2億8,500万円で売却しました。 
    相続人はルール通りに相続税評価額を5,802万円と申告しましたが、これに国税庁が待ったをかけたのです。 

    その際に争点となったのは、 

    ①相続人は購入価格と相続税評価額の差が多額であることを認識し、節税のために被相続人の名義を無断使用してマンションを購入した。 
    ②購入から相続までの期間が非常に短く、一時的に財産の所有形態が不動産であったに過ぎず、財産の過小評価となり平等性を害する。 
    という点。 
    相続発生前後の極めて短期間で売買し、租税回避の目的が明らかだった事と、購入価格と相続税評価額の乖離が非常に大きかったため、「著しく不適当」と判断されたのです。 

    節税自体は合法な行為ですが、行き過ぎた節税は必ず国税局からつつかれます。 
    また相続税増税以降、過熱したタワーマンション市場で高値掴みしてしまい、収支がマイナスになるといった事も起こりえます。 
    不動産を利用した節税対策はタワーマンションを用いたものだけではありあません。 
    タワーマンションを用いた節税対策をする際には、メリットだけでなく、この様なリスクも隣り合わせという事をしっかりと認識し、比較検討を行ったうえで実施するべきです。 


    ページ作成日 2017-04-17