以前、固定資産税の課税明細について読み方をご紹介するコラムを作成しましたが、
(固定資産税課税明細書の見方を徹底解説 自分の土地の本当の価値はどれ?)
建物の評価額について、「思ったより高かった」「安かった」という感想を良く聞きます。
建物の評価額が経年に伴って減価されるのは皆様良くご存知の事とは思いますが、どの様な計算に基づいて減額幅が決定されているか、皆様ご存知でしょうか?
本日は、家屋の固定資産税評価額について研究していきます。
建物の固定資産税評価額に影響するものとは
固定資産税の計算に影響する要因は様々ありますが、大まかには以下の二点です。
①再建築する際にいくらかかるか
②どれぐらい損耗しているか
基本的にはこの二点を掛け合わせて固定資産税評価額が決定されます。
例えばソーラーパネルや床暖房などの良い設備を使っていたり、構造がしっかりしていたり、同じものをもう一度作ろうとすると高額になる事が想定される場合、①が高くなり固定資産税評価額も高くなります。
この再建築費は大体実際の建築費の5割~6割くらいです。
新築時の固定資産税評価額が、建築費の大体5~6割くらいといわれるのはこのためです。
また、②のどれくらい損耗しているかは、基本的に経年劣化を考慮して決定します。
建物構造などから経年減価率が定められ、それに沿って固定資産税評価額は減額していきます。
例えば木造は早く減価がされ、RCは長持ちするので中々減価されないといった具合です。
建物の固定資産税評価額が逓減していくのはこの②が大きく影響しています。
また、建物の用途も評価額に影響を及ぼします。
一番減価が緩やかなものはホテルや旅館であり、建物の固定資産税評価額が高くなりがちです。
「固定資産税評価額は年々減っていって、最終的には0になるんでしょうか?」
といったご質問をいただいた事があります。
結論から言えば、建物の固定資産税評価額は新築時の2割までしか下がりません。
経年減価率の下限が0.2である事がその理由です。
下記ページは、総務省が公表している家屋の固定資産税評価方法について解説されたページです。
長大なページ数となっていますが、一番下のほうに経年減価率表が掲載されており、下限が0.2である事が確認できると思います。
総務省 家屋評価額について
家屋の評価額が最終的にゼロになるといった誤解は、おそらく不動産の持つほかの価格と混同してしまっていることに起因すると思われます。
不動産は、「一物四価の法則」という、経済学上特殊な性質を持っています。
固定資産税評価額や相続税評価額など、税制上の評価額はその価格のうちの一つです。
しかし、不動産にはその他に「実勢価格」という価格もあります。
「実勢価格」とはマーケット価格とも言い換えられ、実際に取引される際につけられる値段の事です。
これは市場の需給関係から決定される価格であり、税制上の「評価額」とはしばしば乖離します。
この実勢価格の観点からみると、建物の価値が0になるということは起こりえます。
詳細は省きますが、木造一戸建ての住居が大体20数年で価値が無くなるということは有名な話です。(実際は様々な要因が考慮されますので一概には言えませんが)
価値の無い古い家屋は価値が無く、更地にして土地だけにして売ったほうが価値がある、なんてケースも珍しくありません。
この「実際の価格」と「評価額」は混同しやすいのですが、全くの別物である事を認識する必要があります。
特に節税対策においては、この乖離をいかに利用するかという事が極めて重要なポイントになります。
タワーマンションを用いた相続税の節税対策などはその最たるものでしょう。
また、減価償却においては、例えば木造建築物であれば22年といった耐用年数が定められ、その期間で償却するといった考え方があるので、その知識もこの誤解を生む一因になっているかもしれません。
「評価額」はあくまで税金を徴収するためにつけられた価格です。
マーケット上、帳簿上で全く価値が無いのに、評価だけが残っているという事は起こりえるのです。
実勢価格と、税務上の評価額の違いを正しく認識することは、相続対策や資産運用を考える上で極めて重要であり、混同している場合ではありません。
ご自信が所有する不動産にどのような価格がついていて、それがどの様な場面で使われるのか、正しく理解しましょう。
ページ作成日 2018-09-17