成年後見制度 家族信託 どっちを使えばいいの?


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  • 成年後見制度 家族信託 どっちを使えばいいの? 2017-09-18

    こんにちは、資産活用サポート担当の渡邉です。 

    先日、とあるニュースサイトで気になる記事を見つけました。 
    タイトルは、「親が「認知症」になる前に知っておくべき財産管理の問題」。 

    この記事の内容を要約すると、 
    「親が認知症になってしまった場合、親の預金が凍結されてしまうので、成年後見人制度を利用するべき」 
    というもの。 

    この記事の中では、認知症になってしまった場合は成年後見制度をおすすめされていますが、それだけでは認知症対策として十分ではありません。 
    本日は、「認知症による預金凍結への対抗策」として、成年後見制度と家族信託を比較していきたいと思います。 

    まずは、成年後見制度を利用する場合のデメリットから見ていきましょう。 


    1.成年後見制度は一旦始めたらやめられない 
    成年後見を開始すると、本人の意思能力回復が認められるか、本人が亡くなるまで、やめることができません。 
    たとえ認知症になった親の預金が底をつき、成年後見人が必要なくなったとしても、それで終了とはいかないのです。 
    また成年後見人、成年後見監督人には、被後見人の財産額によって、毎月2万円~6万円の報酬を支払う事になります。 
    この報酬も、認知症になった後、本人が亡くなるまでずっと払い続けることになりますので、予め覚悟を持っておくことが必要です。 


    2.家族や一族が望むことであっても、本人にメリットが無ければ実施できない 
    成年後見制度のデメリットとして代表的なものが、財産の処分に対して、自由度が減ってしまう事です。 
    相続税対策など、家族や一族のため、本人が元気であれば選択したであろう事でさえ、成年後見人には実施できないのです。 
    (たとえ、相続税対策として毎年110万円ずつの暦年を行っていた記録があっても、継続して実施することができなくなります) 
    また、収益性の芳しくない賃貸不動産や空き家となった自宅を売却する事でさえ、できる場合とできない場合があります。 



    成年後見制度を利用する場合のデメリットは、この2点が代表的なものです。 
    最近の認知症対策に関する記事では、これらと比較するような形で、家族信託のメリットが語られるケースが多くあります。 
    家族信託を利用するメリットを検討すると、以下のものが挙げられます。 

    1.始点と終点を契約によって決められる 
    成年後見制度の場合、本人の意思能力の低下に始まり、終点は本人の死亡(もしくは意思能力の回復)に定められます。 
    家族信託の場合、信託契約により即時スタートし、終点も契約により決定することができます。 
    本人が亡くなる前に終点を設けることもできますし、逆に数代先まで契約を継続させることも可能です。 



    2.本人の希望に沿った、柔軟な資産管理・運営が可能 
    本人の希望に沿ってさえいれば、相続税対策を踏まえた柔軟な財産管理や積極的な資産活用が可能となります。 
    贈与や建築を伴う、長期間に及ぶ相続税対策を実施する前に家族信託を導入しておいた方がいいのはそのためです。 



    3.ランニングコストがかからない 
    前述の通り、成年後見制度の利用にはランニングコストが発生します。 
    家族信託の場合、導入に当たって専門家に対する初期費用が発生しますが、ランニングコストは原則発生しません。 



    成年後見制度に比べ、家族信託による認知症対策は柔軟性を保つことができる事が特徴になります。 
    いいことだらけのように思える家族信託ですが、デメリットもあります。 


    1.家族信託に対応可能な金融機関が少ない 
    近年認知度が挙がってきている家族信託とはいえ、金融機関の対応は後手を踏んでいるのが現状です。 
    預金凍結の防止という観点から言えば、家族信託口座の開設に対応可能な金融機関の発掘が必須条件となります。 




    そして成年後見人制度にも、家族信託にはないメリットがあります。 

    1.財産を信じて託す家族がいなくても導入可能 
    成年後見制度は、本人を支える家族・親族が近くにいない方や本人を支える家族に紛争性がある家庭にとっても、大変重要な役割を担っています。 
    家族信託の導入は、財産を信じて託す家族がいる事が前提となっています。 
    その点成年後見制度の場合、第三者を後見人とする事が可能。 
    それに加えて家庭裁判所が監督するため、親族や第三者が、本人の財産を搾取したり、使い込んだりする事をある程度防げます。 
    (残念ながらそれでも後見人による着服が横行しているのが実情です。不安な場合は、後見制度支援信託を利用するという手もあります。) 


    2.身上監護をすることができる 
    財産管理だけではなく、老人ホームへの入居手続きやホームヘルパーの手配等の事務手続きを後見人は実施します。 
    その他、医療やリハビリ、教育などに関する事務も行います。 
    この点が家族信託との最も大きな差といえるかもしれません。 




    ご覧の様に、成年後見制度と家族信託はそれぞれにメリットがあります。 
    それぞれのニーズや取り巻く状況に合わせて、最適な方法は何か、比較検討をするには、それぞれの制度について良く知っている必要があります。 
    どちらの制度だけが有効だという断定をすることなく、必要な知識をたくわえ、柔軟に比較検討をしていただきたいと思います。


    ページ作成日 2017-09-18