こんにちは、資産活用サポート担当の渡邉です。
前回に引き続き、相続資産圧縮対策の基本を解説していきます。
今回は、非課税枠・控除額を増やす方法をご紹介します。
「非課税枠・控除額を増やす」には以下の3つの方法があります。
1、非課税枠を使える資産へ組み替える
2、法定相続人の人数を増やす
3、配偶者の1次相続段階での相続割合を変える
1、非課税枠を使える資産へ組み替える
現金や預貯金で保有している財産を、非課税枠が適用できる資産へ変えることで、相続財産を圧縮します。
相続財産の中で非課税枠になるものは、以下のようなものになります。
・お墓などの礼拝物
墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝している物。
前回ご紹介した通り、骨董的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかりますのでご注意ください。
・公益を目的とした事業に使われるもの
宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの。
・障碍者を扶養するための給付金を受ける権利
地方公共団体の条例によって、精神や身体に障碍のある人、又はその人を扶養する人が取得する心身障碍者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利。
・生命保険の非課税枠
相続や遺贈によってもらった生命保険金のうちで、「500万円×法定相続人の人数」までの金額。
・死亡退職金の非課税枠
相続や遺贈によってもらった退職手当金のうちで、「500万円×法定相続人の人数」までの金額。
・花輪代、香典、弔慰金
花輪代、香典、弔慰金も課税されます。
業務上の死亡では賞与を除く給料の3年分まで、業務上以外の死亡の場合は給料の半分までが非課税です。
・幼稚園の事業に使われていた財産
個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの。
なお、相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営する事が条件となります。
・国などに寄付した財産
相続や遺贈によって取得した財産で相続税の申告期限までに国又は地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の団体に寄付したもの。
あるいは、相続や遺贈によってもらった金銭で、相続税の申告期限までに説く敵の公益信託の信託財産とするために支出したもの。
・債務(借金)
非課税財産とは違いますが、銀行のローンや友人からの借金は、相続財産から差し引くことができます。
ただし、相続時点では債務額が確定していない連帯保証債務は差し引くことができません。
この中でも特に相続税評価額の圧縮に使われるのが、生命保険金の非課税枠です。
生命保険金には「500万円×法定相続人の人数」の非課税枠があります。
このため、支払った保険料の総額よりも保険金額が少ない場合でも、その差額が非課税枠の範囲内であれば、現金で保有しているよりも相続税評価額が小さくなります。
(契約者、被保険者、保険金の受取人の関係によっては税金の種類が変わりますので、注意が必要です)
2、法定相続人を増やす
3000万円+600万円×法定相続人の人数で計算される、基礎控除額を増やすことが目的です。
とはいえ、法定相続人を増やすとはいったいどのようにすればよいのか、と思われるかもしれません。
任意のタイミングで法定相続人を増やすためにできることは、養子を取ることです。
養子は、被相続人に実子がいる場合は一人まで、実子がいない場合は二人まで法定相続人に含めることができます。
このため、孫を養子にして法定相続人を増やす、相続人である子供の配偶者を養子にするといったことを行うことがあるのです。
法定相続人の人数が相続税の計算のときに関係する場合を整理すると、次の4つになります
・相続税の基礎控除額:3000万円+600万円×法定相続人の人数
・生命保険金の非課税限度額:500万円×法定相続人の人数
・死亡退職金の非課税限度額:500万円×法定相続人の人数
・相続税の総額の計算:上記3つの結果が反映される
ちなみに養子の制限は、相続税の計算上のことです。
財産の分配をする上では、相続人にできる養子の人数に制限はありません。
ちなみに非嫡出子も実子なので、認知されていれば相続税の計算上でも法定相続人に含めます。
非嫡出子とは、婚姻外で生まれた子供のことを言います。
相続税上で法定相続人に含めることができる養子には上記のように制限があるのですが、代襲相続である孫と連れ子養子には人数に制限はありません。
全員が相続税計算上でも、法定相続人となります。
相続人が被相続人よりも早く亡くなっている場合、相続人の子供が相続人になります。
この相続人のことを代襲相続人といい、養子には当たりません。
連れ子養子とは、再婚した配偶者が前の配偶者との子供を養子にした場合を言います。
代襲相続や連れ子養子は、相続税の負担軽減が目的で行われるものではないため、法定相続人にする際に制限はないのです。
ちなみに、法定相続人の数は相続税の計算上は、相続放棄が無かったものとすることになっています。
このため、相続放棄があっても相続税総額は変わりません。
ただし、各人の法定相続割合や遺留分の割合は変わるので、注意が必要です。
相続人が妻と一人息子の場合、妻(一人息子からすると母)にすべて相続させようと一人息子が相続放棄すると、法定相続人が夫の両親や兄弟になってしまいます。
このため、このような場合は、一人息子は相続放棄をせずに、相続分をゼロで相続する事にします。
3、配偶者の一次相続の段階で相続割合を変える
親の世代から子供の世代へ財産が全て移るには、父親が亡くなるときと母親が亡くなるときの二回の相続が想定されます。
一回目の相続のことを一次相続、二回目の相続のことを二次相続と言います。
一次相続の段階で配偶者の相続割合を増やすと、一次相続における相続税は軽減されます。
それは、「配偶者控除」があるからです。
配偶者は、「法定相続割合の範囲内」と「1億6千万円まで」のどちらか大きいほうの金額までの遺産を受けとる時は、相続税はかからないのです。
一次相続の段階では、配偶者の相続割合を増やすケースもよく見受けられます。
しかし、安易に一次相続の段階で配偶者の相続割合を増やしてしまうと、二次相続での相続税額が膨らんでしまいます。
場合によっては、一次相続の段階で配偶者の法定相続割合を減らすほうが、一次相続と二次相続の合計の相続税額が抑えられることがあります。
一次相続と二次相続の両方を考えて、一次相続での配偶者の相続割合を決めないといけないのです。
一次相続の段階では相続が発生してから相続対策を考えることになったとしても、その段階では二次相続までの時間の余裕はあります。
そのため、二次相続までには相続税評価額を圧縮するための対策を実施することも可能です。
二次相続段階で相続税評価額をかなり圧縮できるのであれば、一次相続で配偶者の相続割合を増やしても、一次相続と二次相続の合計の相続税額は抑えられるかもしれません。
以上のようなことを考慮してさまざまなシミュレーションを行い、一次相続での配偶者の相続割合を決める必要があります。
二次相続まで見据えた、一次相続の最適分配比率を知りたい方は、
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いくつかのご質問にお答えいただいた上で、シミュレーション結果をお送りさせていただきます。
無料承りますので、お気軽にお申し付けいただければと思います。
ページ作成日 2017-05-08